エンセファリトゾーン症
今日はエンセファリトゾーン症の診断についてお話ししようと思います。
エンセファリトゾーン症の確定診断は剖検(死亡した後に病理解剖をすること)のみであり、生前診断が非常に難しいです。
しかし、じゃあ死ぬまで治療しないのか!というわけではありません。
臨床症状と、有用がある抗体検査を基に、投薬を行っていきます。
抗体検査についてお話しします。
☆抗体とは…異物が体内に入り込んできた際、異物を除去するために働くタンパクのことです。
抗体価が上昇しているということは、異物が侵入している(していた)可能性を示唆します。
ヒトの子供に日本脳炎のワクチン接種を行うのと同じです。
ワクチンによって体内に抗体を作ります。
そして、日本脳炎ウイルスが実際に入ってきてしまったときに、その抗体が退治してくれるのです。
☆検査までの流れについて
病院にて、うさぎさんの採血をし、血清分離をします。
血清とは…
まず、血液は、血球(赤血球や白血球など)と血漿(血球を除いた部分)でできています。
出血したときに、自然と血が固まって止血ができますよね。それは、血小板の役割でもありますが、血漿の中に含まれている血液凝固因子の役割でもあります。
一方、血清は、血液が自然と固まって(血液凝固因子なども含む)血餅となりますが、それ以外の液体成分のことを言います。
血漿と血清の違いは、凝固因子を含んでいるかどうかです。
エンセファリトゾーンの抗体検査をしてくれる施設に、検体の血清を送ります。
以下のように検査結果が戻ってきます。
ペア血清とは、2~3週間後にもう一度抗体価を確認し、1回目の抗体検査よりも上昇しているかどうかを確認するものです。160倍という高い抗体価であれば、臨床症状を考慮して、エンセファリトゾーン症の治療をするケースもあると思います。
注意が必要なのが、感染している症例すべてに抗体価が上がるわけでもないということ
また、治療をして抗体価が下がるわけではありません。
過去に感染があった症例は、すべて抗体を持っているためです。
なかなか、はっきりと診断ができないことは心苦しいのですが、
うさぎさんにとって治療薬を飲んで損はないと思っています。
それは、以前参加させていただいた症例検討会にて
白内障を発症したうさぎさんが1週間後に亡くなってしまい、剖検の結果、エンセファリトゾーン症と診断されたといことを聞きました。
このケースは非常にまれだと思うのですが、
慎重にならないといけないなと感じました。
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